最新情報によれば、既存の米の専門店数は、旧食管法のときに比べ三分の二程度に減り、 新規小売登録件数は大幅に増え、全国の小売店舗数は、約十八万二千店になったそうだ。
街に出て、米売り場を見てみると、どこの売り場も有名産地、有名銘柄のオンパレードである。 あの新潟県魚沼産「コシヒカリ」などは、全国生産量の〇.七パーセントしか生産されていないはずなのに、 どこの売り場にもあるのは妙である。
消費者は有名産地、有名銘柄の米を求めるほうが多く、販売するほうは内容はどうであれ、 新潟・魚沼産など有名産地、有名銘柄の表示をしなければ売りにくいのである。
確認マークだの認証マークだの「本物だぁ、本物だぁ」と表さなければならない。 そこで、表示と内容との間にゆがみができて組織がらみの偽マーク事件まで生まれてくるのである。
他方、ここにきてブレンドこそ究極の味を引き出すものと中身を表示しないで、 単に「ブレンド」として高額な価格セッティングで販売する動きも出てきている。
私は一九六八年から米の単品や混米したのを一日三回三種類ずつ九種類試食して、 記録しているが、単品、ブレンドどちらにしても、うまい米を見つけるのは難しい。
同じ産地の同じ銘柄でもつくった人によって味が違う。
おいしいものはそのままに、そうでないものはブレンドして、消費者によりおいしく食べてもらうのが私の仕事である。
あの産地の、あの銘柄とこの産地のこの銘柄とをブレンドすればおいしくなる……。
そんな単純なものではない。腹が減っていればどんなものでもおいしく感じるが、膨れていればそうではない。
あの米パニックの時は腹が減った状態だが、今はそうではない。よりおいしいものを販売しないと、 世間が受け入れないのである。米が主食でなくなりそうな時、もう一度消費まで、種々考えなければならない時代ではないだろうか。