新聞折り込みに入っていた近くのスーパーマーケットの安売りちらしを見て、 一パック百円の卵を買いにいかれたお客様が、そのスーパーが閉まっている、と私に話された。 そのちらしによると、今日から始まる「二日間限りの時価」のその日が今日なのに……。 夕方にはそのスーパーの前に何台かのトラックが来た。「倒産!」だそうだ。
われわれ米屋も他人事ではない。いや小売店だけではなく、卸も米に携わるあらゆる人が大変な時代を迎えているのである。
九月の初めに長野県のJA佐久市へ、九月の終わりに石川県のJA寺井町に行く機会を得た。 両地ともJAの職員さんや農家の方に親切に米の栽培方法などの説明を受け、田んぼを見せてもらった。
日ごろ何気なく見ていた田んぼも、一枚ずつ個性があるのに気が付いた。 この田んぼと隣の田んぼは、伝わってくる雰囲気が違うのだ。 説明によると、両方の田んぼとも同じ品種が栽培されているというが、作る人が違うらしい。
米屋は総じて売り上げが落ちているのが現状だが、その中でも売り上げを伸ばしていたり、 現状維持の米屋もある。何故かそれらの店は個性的である。
安売り合戦に参加するのではなく、一時の流行を追うような店でもないが、 お客様の心をがっちりつかみ、魅力的な商売をしているのである。 今、米屋は安売りしても売れないのである。 何故か売り上げの落ちている店は、安売り合戦に参画したり、その場限りのサービスに走ったりする店が多いようだ。
お客様も個性的である。硬いご飯が好きな方、軟らかいのが好きな方、 粘りのあるのが良い米だとおっしゃる方がいる。「硬い米ならあの米屋で」 「粘りのあるのはあの店で」といわれるような、個性的な米屋が必要かもしれない。 そのようなお客様は十人中二人くらいかもしれないが、日本国中相手にすればまだまだ面白い商売かもしれない。
各産地や生産者の方も「粘りのあるのなら任せてくれ」というような、個性的な生産地や生産者が合ってもよいのではないかと思う。