「偽者でもいい、安ければ」。ブランド物のバッグの話ではない、主食の米の話である。 先刻承知の消費者は、「この値段でこのブランド米はあるはずがない」と思いつつ買っている。 そのような話ならまだいい。癖の悪いのは、それらしい値段をつけてブランド米袋に入れられた偽物である。
その売り場で、その米は、他の米より高値であるが、市場価格より得な買い物だと思われる値段である。
九月中旬の某新聞によると、「ブランド米激安って本当?増えるニセ表示」の活字が躍っている。
ある生産者の話であるが、その生産者が有名な某卸に納品し、 彼の田んぼの中でにっこり笑った写真印刷の袋で売られている。ところが品質面で消費者の苦情があり、 直接返品を受けたところ、中身がその生産者が納品した米とは違う品であったらしい。
安くしないと売れない。だが、もうからない。そこで下級品を混米する。 味が悪くなる。売れなくなる。また安くする。食糧法になってからの過当競争のゆがみが、左回りの米流通社会を形成している。
消費者は納得の上か否かは別にして、偽物を食べ、流通業者は苦汁を飲み、生産者は生産意欲を失いつつあるのではないだろうか。
このさまをだれがどこで笑っているのだろう。せめて、われわれだけでもまじめにやろう。 私どもではうまければ高い米でも買ってくれる人が、まだまだいるのだから。