当初は、流通現場も騒ぐことはないだろうと思っていた。しかし、例年ならいつもの生産者から「新米が取れたからいつごろ送ったらよいか」と、こちらの倉庫事情を聞いてくるが、いまだに電話もかけてこない。
先の連休に岡山の生産現場に行った。そこでは、岡山市内のウイークリーマンションに、関東の業者が泊りがけで米を買いに来ていると聞かされた。先日当店に来た業者は、北陸、京都と回ってきたが、他の業者が「高く買います」とかいたちらしをもって生産農家を一戸ずつ回っていると言っていた。兵庫のある米卸は二〇〇二年産を買いあさった。大阪のある卸は政府米を強力に買っていると聞かされた。われら零細小売は、それらの業者に高く買わされるが、消費者に高く売りにくい状況にある。不況が続く世の中で、前回の不作時とは情勢が全く違う。
福岡の生産者からは、十アール当たり収量が確実に一俵(六十キロ)以上減っていると聞かされた。西日本の作柄はまだましだろうと思っていたが、本当に作況指数は全国で九十だろうか――。仕入れるほうも、売るほうも、だんだんと心細くなってくる。前回は消費者が米不足のために踊らされたが、今回は販売業者が踊らされる番らしい。