トレーサビリティー(生産履歴を追跡する仕組み)や素性の分かる米、生産者の顔の見える米、安心・安全のために、そのような米が求められている、と一般的に言われている。
「この生産者がこの方法で作った米ですよ」と客に売れば、客は後日「あの米、まずかったわ!」。私はすかさず「すみません!生産者に伝えておきます」と答えると、その客は「私は生産者の顔を見て米を買ったのではない。あなたの顔を信用して買ったのだ」と言う。販売業者は、客に代わって、その客が求められている米を選んで、差し上げるのが本筋ではなかろうか?
米の場合、実際に食べないで、一般的な特徴をうのみにして提供すれば、その特徴が当たっていない場合が多々ある。そのために、毎日、毎食試食を繰り返し、一回、一回の精米商品ごとに特徴をつかむこと、それが私の仕事である。売るために種々の産地や、銘柄の米を並べることはたやすいが、買って食べてもらったとき、お客様に「満足」という付録をつけるのが難しい。だが、そのことを乗り越えないと生き残れない。生産者の皆さん、よりおいしい米を作ってください。「満足」という付録のついた米、高く買います。でも、自然の中で育つもの、まずいときは、より安くして下さい。産地や銘柄でなく、うまい、まずいで価格が決まれば、偽表示などないと考える。